SHIROの素材 vol.2 ラワンぶき
北海道足寄郡足寄町
SHIROが素材巡りをする中で出会う生産者さんや地域の方々、そして自然が教えてくれることはたくさん。
素材紹介vol.2では、肌荒れを防ぎたっぷりの水分を与えてくれる「ラワンぶき」についてのお話です。
SHIROにとってラワンぶきとはどんな素材なのか、そして近年の気候変動によるラワンぶきの収穫量減少、その中で生まれた新たな出会いをご紹介します。
“Simply Simple”を象徴する素材
大きく育ち、森のようなラワンぶき畑
ラワンぶきは、北海道足寄町にのみ生育しているふきです。道内では昔から自生している植物として知られていますが、年々数も減ってきており、日本一大きなふきとして地域特産物となり栽培されています。大きいもので全長3m、太さが10cmにもなる姿は圧巻で、畑の様子はまるでラワンぶきの森のよう。また、ポリフェノールやミネラルが含まれ、食物繊維も豊富なことから、食用としても楽しまれています。
SHIROとラワンぶきとの出会いは、SHIROの前身であるLAUREL時代に遡ります。足寄町の鳥羽農場さんが育てていらっしゃるラワンぶきは、太い茎を切ると水分が溢れ出るほどのみずみずしさがあり、アクが少なく、食べてもとてもおいしかったのです。この鳥羽農場さんの栄養たっぷりなラワンぶきを製品にしたいと考えてつくったのが、sozai LAURELシリーズ『ふき 化粧水』や『ふき フェイスマスク』でした。
LAURELの時代から今に至るまで、SHIROではラワンぶきのジュースを贅沢に配合し、ほんの少しの防腐剤を加えただけの極めてシンプルな処方で製品をつくっています。LAURELの時代から大切にしてきた“Simply Simple”という考え方。これを象徴する素材のひとつが、ラワンぶきなのです。
ラワンぶきと向き合い続ける鳥羽農場さん
鳥羽農場の鳥羽秀男さん
鳥羽農場さんは、足寄町で長く農業を営む農家さんです。町と農協、農業改良普及センターがラワンぶき栽培に取り組んだ当初から参加され、町内の小学生を対象にしたラワンぶきの食育活動に取り組むなどの活動をされています。そして、北海道足寄町がラワンぶき栽培に取り組んだ当初から参加され、鳥羽秀男さんと奥さまの昇子さん、息子の翔太さん、翔太さんの奥さまのみのりさんで農業に携わっています。
LAURELの時代、鳥羽さんへラワンぶきを化粧品に使いたいとお話をした当初は、半信半疑だったそうです。しかし、鳥羽農場さんのラワンぶきの魅力を肌にも届けたいという想いからものづくりをしていく過程で、SHIROのものづくりをご理解くださり、今に至るまで、素材となるラワンぶきを提供し続けてくださっています。
自分が食べたい野菜しか栽培しない、と話す秀男さん。今はラワンぶきのほか、小麦や玉ねぎ、長いもなどを栽培しています。息子である翔太さんも農作業を手伝っており、2022年には農場の代表を秀男さんから引き継ぎました。上京する同世代も多い中、故郷に残り家業を継いだ翔太さんをはじめ、ご家族で農作物と向き合いながら栽培されている鳥羽さんたちと共にものづくりをしたいと思っています。
その一方で、今SHIROが使わせていただいているラワンぶきの量は、鳥羽農場さんが生産する全体のごく一部であるのが現状です。最初は、規格外とされ流通しないものを分けていただき製品をつくっていましたが、仕分けなどの特別な対応をしていただくことが難しく、現在は規格内のものも分けていただき製品化しています。私たちは捨てられる自然素材を有効活用したい想いと、その方法を考え出すことの難しさを実感しながらも、解決できる方法はないかと模索しています。
ラワンぶきの未来のために
ラワンぶきの太い茎の断面
2025年は、SHIROとラワンぶきの関係性に新たな出会いがありました。
ラワンぶきの旬は6月から7月の初夏の頃。しかし、2025年はその時期になっても鳥羽農場さんの畑にラワンぶきの香りが色濃く漂っていませんでした。鳥羽農場さんによると、近年は気候変動により、ふきの収穫量が減っているとのこと。以前は300トンもの収穫量があったのですが、2024年に250トンまで減少したそうです。ラワンぶきは1シーズンに4回芽を出しますが、一番最後に芽を出す「4番ぶき」は刈り取らず畑の栄養にします。しかし、その「4番ぶき」が夏の高温・乾燥で十分に育たないため、土壌に栄養が蓄えられず、翌年もラワンぶきが成長しない、という悪循環が続いているのです。また、株が密集しすぎて水や栄養が行き渡らないことも課題になっています。それでも、鳥羽さんはラワンぶきを長年栽培し続けてきた経験から、「この土地にラワンぶきは向いている」と感じていらっしゃいます。
足寄町では、数年前の夏、洪水によって川が氾濫しました。ところが、その後の土地には、ラワンぶきが元気に育っていたのです。氾濫によって密集していたラワンぶきの地下茎が流れ、土壌が一度リセットされて、再びラワンぶきが育ちやすい土地になったのでしょうか。しかし、ふきは地下茎で育つ植物のため、畑から完全に取り除くのは簡単ではありません。根が強すぎて取り除こうと思っても太刀打ちできないのです。鳥羽農場さんのこの気づきから、畑の一部の土を起こし、麦などを蒔きながら土地を休ませることにしました。輪作し、麦を育てることで、土の表面が乾燥しないだけでなく、土壌の成分のバランスを保ち栄養のある土壌に整えることができるからです。
足寄町役場さんの圃場のラワンぶき
そのため、2025年は例年よりも鳥羽農場さんから分けていただくラワンぶきの量が減ることに。どうしようかと考えていたところ、出会いがあったのが足寄町役場さんです。足寄町役場さんの圃場で育てているラワンぶきをいただく機会があり、実際に食べてみると、このふきもまた、とてもおいしかったのです。そこで、ぜひ製品に使いたいと思い、足寄町役場さんからもラワンぶきを分けていただくことができました。
気候変動により自然の生態系に変化が出ることは防げないことです。しかし、それは私たちが真摯に向き合い、解決していくべき課題です。SHIROは自然の都合に合わせたものづくりを大切にしています。だからこそ生産地に向かい、自ら生産者の方々とお会いし、現場の“今”を知るようにしています。そうすることで、素材の魅力だけでなく、起きてしまっている課題にも気づくことができます。自然からいただいた恵みや関わってくださっている方々、お客様への感謝を、ものづくりを通して社会へ還元すべく、SHIROはこれからも素材のパワーを活かしたものづくりを続けていきます。