製品ができるまで vol.7 『白樺2023』

北海道旭川市江丹別町

素材との出会いから始まるSHIROのものづくり。
日本各地の生産者の皆さんとともに、自然が育んだ素材の恵みを最大限に活かす製品開発に取り組んでいます。
2022年7月にSHIROからはじめて登場した「白樺フェイスミスト2022」が、今年は美容液と化粧水に生まれ変わりました。
シロのものづくりをご紹介するこの「製品ができるまで」シリーズですが、vol.7の今回は、『白樺2023』が誕生するまでのストーリーをお届けいたします。

北海道生まれのSHIROにとって白樺の木は、森だけではなく公園や道路の脇に自生している日常の風景の一部でした。日本では北海道の他に、長野県など寒い地域で出会うことのできる白樺は、見た目に美しい光沢のある白い樹皮と木目が印象的。雪解けの時期になるとたくさんの水分と栄養を土から吸い上げて幹の中を満たします。
また生命力が強く、荒地でも他の植物より真っ先に芽吹くといいます。
その樹液には、ミネラルや糖、ビタミンなどが多く含まれており、そのほっそりとして爽やかな見た目からは想像できないほどエネルギーに満ちた森のシンボルのような木なのです。寿命は約100年と言われていますが、朽ちた白樺は他の植物の栄養分となることから、「母なる木」との別名も。

旬シリーズ「白樺2023」

そんな白樺の力強さを改めて教えてくれたのは、素材を探す旅の中で出会った木こりの皆さんでした。そして2022年7月、SHIROからはじめて白樺を素材としたスキンケアが誕生した背景には、北海道旭川市江丹別町の木こりの野中さんとの出会いが大きなきっかけとなりました。
白樺フェイスミスト2022を製品化するにあたり、野中さんが管理している江丹別町の森へワークショップの一環として入山させていただきました。ただ闇雲に樹液を採液し若葉を摘み取るのではなく、間伐のために伐倒した白樺の若葉を摘み、幹の部分は2023年4月にオープンしたばかりの「みんなの工場」の什器にも使用させていただきました。
今年の「白樺2023」でも、野中さんはじめ木こりの皆さんにご協力いただき、樹液300kg・若葉75kgをお裾分けいただきました。

旬シリーズ「白樺2023」

木に切り込みを入れると澄んだ透明の樹液が滴ります。切り込み口から管を入れ、あふれ出る樹液を少しずつ採液していきます。
樹液は雪解けが始まり芽吹く直前の2週間~1か月という限られた期間で採液することができます。
採液した白樺の樹液は水の代わりに飲めるほどさっぱりとした口当たりで、清涼感のある甘さが特徴。その樹液の成分のほとんどが水分で出来ていて、ごくわずかなグルコースやアミノ酸によって甘さを感じさせるのだとか。
自然が作り出すありのままの樹液と若葉のエキスを使用し製品化しています。
「白樺化粧水 2023」では若葉の豊かな香りを感じていただきたく、フェイスミストではなく手で顔を覆うように使う化粧水の仕様に仕上げました。

旬シリーズ「白樺2023」

白樺の若葉は、人の手で一枚一枚丁寧に収穫しています。
枝も柔らかな若い木から収穫した若葉たちは、そのフレッシュさが故に葉の香りが特に強いです。採れたての生の葉はどこか青リンゴのような爽やかな香りを蓄えていて、その香りの鮮度を高く保つために梱包の仕方を工夫し低温保管のもとSHIROの工場へ運びました。
葉を一枚ずつ均等に並べて乾燥させ、余分な水分を飛ばすことで白樺の成分をぎゅっと濃縮。

開発を進める中で、白樺の新たなポテンシャルを発見したエピソードもあります。
白樺の葉からエキスを抽出する際、85~90度の熱水に入れ、じんわりと葉のエキスを抽出していきます。この時、採れたての若葉だけを熱水抽出していた時より、少し収穫時期をずらした葉を熱水抽出した時の方がエキスのとろみに粘度が強いことに気がつきました。
このとろみの強いエキスによって、より高い保湿力を実感できたため今年は白樺の美容液も製品化することが決まりました。
開発チームの中川は、抽出する際の水の温度や湿度、攪拌時間などさまざまな物理的な状況と、その年の植物たちの特性が全て揃うことで私たちは製品を生み出すことができていると言います。
昨年同様、採りたての若葉だけを使用しエキスを抽出していたら、この美容液の誕生はなかったと思います。その時その時の植物の状況と向き合い製品開発をするからこそ、収穫時期をずらした葉のほんの少しの機微を感じ取り、素材の力を最大限に引き出すかたちで製品に落とし込むことができています。

白樺シリーズの開発を始めて、東川・札幌・洞爺・ニセコ・余市・江丹別と行ける範囲の森に入り、白樺の葉を香り、樹液を飲みました。野菜も作り手によって味が変わるように、木の一本一本にもそれぞれ個性があります。森や山の管理方法によって違いが表れるのか、もしくは木こりなど生産者の想いが伝わるのか、その森に関わる人間によって環境から変わっていくのではないでしょうか。
今年は気温が高く雪解けの時期が早まったことにより、森に入る時期がほんの少し早くなりました。その気温の高さから木々たちにはたくさんの葉がつき、大きく育ったため収穫の時期を早めたのです。

その年々で変わる森の小さな変化を感じ取りながら、その恵みを分けていただくことができて初めて、旬シリーズの製品たちをお客様へお届けすることができます。また次の旬にはどんな素材と出会い、その素材が持つ力や新たな発見ができるのかが楽しみでなりません。こうした背景を知り、『白樺2023』の製品たちを手に取っていただけたら嬉しいです。

PARTNERS

野中 瑠馬 / waft株式会社

野中 瑠馬 / waft株式会社

北海道旭川市出身で、幼少期から祖父母の所有する森林や田んぼなど自然に囲まれ過ごす。医療職を志し、22歳で地域医療をテーマに理学療法士として旭川の病院に従事。その後、森林へ出向き、森で出会った人たちとの関りから林業をはじめ、各地で修業を繰り返す。人・森・地域のための森づくりを実践しながら、コミュニティ‘モリノワ’の代表としてメンバーの移住者達と共に地域活性に取組む。現在は、「100年先によりよい森をのこす」をミッションとしたwaft株式会社の共同代表を務め、林業だけでなく森の副産物や空間自体に価値を見出し、森への導線となるサービスや産業の仕組みづくりを目指している。
https://waftinc.com