「捨てない」そして「新たにつくらない」お店づくり

2023年9月に「SHIRO ルクア イーレ店」がリニューアルオープンしました。
今回のリニューアルのキーワードは2つ、「捨てないこと」と「新たにつくらないこと」。
従来のSHIROのお店づくりとは大きく異なり、レイアウトを変えず、今ある什器を捨てずに表層替えを施すだけで、新たにSHIROの世界観を生み出す試みでした。

「SHIRO ルクア イーレ店」はリブランディング前の小文字shiro時代、2017年3月1日にオープンしてから今まで、100万名近くのお客様にご来店いただいたブランド一番店です。
店内混雑に関するお声をいただくことも多く、2019年3月、リブランディングを前にお客様の導線を考慮した改装を行っています。このときの改装から4年が経ち、店舗の経年劣化にともない、今回リニューアルオープンすることを決定しました。

グリーンの床とSHIROのサインを掲げる中央の柱、製品棚やカウンターのタイル、タッチアップ台に並ぶピンクのチェア。たくさんのお客様を迎えたルクア イーレ店が生まれ変わります。

改装前の店舗

お店づくりを考える

DRAWERSの小倉さん

DRAWERSの小倉さん

店舗デザインを依頼したのは、SHIRO 大丸京都店、大丸神戸店やシロの東京オフィスの設計を担当したDRAWERSの小倉さんです。
建築業界でも改装工事は、新しくつくる方がコスト的には安く済むと言われています。しかし、老朽化のたびに新しいものをつくり出し、今あるものがまだ使える状態でもゴミとして大量に廃棄されている現実もあります。
SHIROは、自然素材の副産物などを使用したものづくりや、すぐにゴミとなってしまう製品の外箱の廃止、森を蘇生する過程で生まれる間伐材を什器に使用するなど、本質的に循環していくものづくりに取り組むブランドです。そんなわたしたちのお店づくりがこれでよいのか、と疑問に感じました。

改装前の店舗

小倉さんは、ルクア イーレ店の改装内容を検討する際、何度となく店舗へ足を運んでくださいました。そして、お客様やスタッフの導線を直接確認し、お会計時の混雑緩和のためにレジスペースを広げ、什器の高さを微調整する以外には大きなレイアウトの変更は必要なく、既存の設計や資材などをそのまま活かしたリニューアルを考えてくださいました。そうすることで工事期間も9日間と短くなり、工事期間中に別会場での催事なども行うことなく、新たな什器をつくる必要もなくなったのです。
それはゴミを生み出さないことにも繋がります。
通常SHIROの店舗の改装において、建築廃棄物量の平均量は9.71㎥*1ほど。これを基にルクア イーレ店の面積から算出した予想建築廃棄物量は7.72㎥*1、これは1人当たりが1年に排出するゴミの量の約24倍*2にあたります。

*1 弊社他店舗で出た廃棄物量を参考に算出
*2 環境省「一般廃棄物の排出量及び処理状況等(令和3年度)」を参考に算出

捨てないで活かしながら
デザインする

ルクアの床
ペイントの様子

リニューアル後のショップデザインで目を引くのは、カラフルで遊び心満点の床ペイント。
改装工事では通常古くなった床を剥がして捨て、新たに貼り替えます。
ルクア イーレ店の床は汚れてはいるけれどまだまだ使える状態だったので、剥がすのではなく、その上から塗料でペイントを施しました。そして、営業終了後に作業をすることで改装でクローズする前にペイントが完了し、その変化をお客様に見ていただくこともできました。

ペイントの様子

水の都 大阪をイメージしたペイントは、床に塗料をのせてスポンジなどで丁寧にぼかしていく。その上から塗料をたっぷり含ませたスポンジを落としたり、ダイナミックに飛ばしたり、ブランドカラーであるネイビーでアクセントをつけていきました。
ペインターさんの職人技とアドリブで彩られた床が、お買い物時のワクワク感を募ります。
今後また傷や汚れがついたとしても、再びカラーを重ねることで新たな店舗への生まれ変わりを楽しむことができる未来のことも考えたデザインです。

製品ボトルのリユース

今回のショップデザインでは、店内カウンターなどの天板に製品ボトルをリユースし、練り込みました。
これは、2022年に国際香粧品香料協会が定める香料の規制に伴い、製品として使用できずに捨てられるはずだったフレグランスのボトル容器が幾つも余っていたことが背景にあります。SHIROのフレグランス製品のボトルはガラスでできており、これら5400本を兵庫県にあるガラスリサイクルを行う企業に細かく砕いてカレット状(ガラスの欠片)にしてもらい、カウンター用の左官材に練りこみました。そして左官作業日、カレットにしたものとは別にフレグランスやパフュームのボトルを粗く砕き、ロゴや香り名がプリントされている部分や表面、瓶口や瓶底などの欠片を手で埋め込んでいきます。

練りこむ様子

従来のお店づくりでもカウンターや壁面に左官材を使用してきましたが、ボトルのカレットを練りこむことで、研磨したときに白色や半透明のガラス部分が現れ、埋め込んだ粗めの欠片は文字や形を残したまま、個性豊かな表情に仕上がりました。

今あるものを見つめ直し、
大切にしていく

砕いた製品ボトル

SHIROでは、新店オープンでもリニューアルでも、お客様やスタッフの導線、製品の見え方などを第一に考えてお店づくりを行っています。そのため、今回のルクア イーレ店のリニューアルでも、最初から「捨てないこと」と「新たにつくらないこと」をテーマに置いていたわけではありません。

リニューアル後の店内

ルクア イーレ店は同じ区画内でのリニューアルを迎え、せっかくなので全体的なレイアウトの変更も検討しましたが、小倉さんと共にお店を見つめ直せば直すほど、今のレイアウト以上のものはないと気づかされたのです。
壁面がなくどこからでも入店することができ、中央の柱に光る2つのSHIROのサインがいつでもお客様をお迎えします。そして余白を感じさせる什器が製品を手に取りやすく、お買い物をしやすくしてくれます。ほんの少し変えたのは、レジスペースを広げたことと、製品を見やすくするために什器の高さを微調整したことだけ。

カウンター

捨てずに活かすことで嬉しい発見もありました。
従来のタイル地のカウンター部分もタイルを剥がしたりせず、左官職人さんたちが隙間を埋め密着するように丁寧に仕上げてくださいました。少し出っ張っている箇所があり、同じ強さで研磨した際に、左官材の中からタイルが顔を出したのです。これはそのまま使用しているからこそ生まれたもので、それさえも愛おしく感じるのです。

自然の恵みを最後の一滴まで余すことなく使い、ものづくりをするSHIROだからこそ、お店づくりを通して、今あるものを見つめ直し大切にすることを提案していきたいと思っています。

ルクア イーレ店リニューアルの様子はこちら。

Photo by KeitaSawa

Movie by HidekiBaba

PARTNERS

小倉 寛之 / DRAWERS

小倉 寛之 / DRAWERS

設計を担当したDRAWERS の小倉 寛之さんは、空間デザインにおいて美しさや利便性を追求すると同時に『つくる責任』を意識し、未来を考えたプロダクトデザインやクリエイションを行っています。
また小倉さんは、2024年春にオープンする北海道夕張郡長沼町の一棟貸し宿泊施設「MAISON SHIRO(メゾンシロ)」の設計や、シロの東京オフィスの設計も担当しています。

小倉さんのデザインする、
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